原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 アビゲイルは何も言わず、お茶のお代わりを勧めてくれた。


「ロザリンド様、ホナミちゃんはカフェオレが好きだったわね」

「覚えていてくれていたんですね。
 ありがとうございます」


 この世界にはコーヒーがなくて、カフェオレを飲むことは出来なかった。
 ミカミがおごってくれたカフェオレが、私が飲んだ最後のカフェオレだった、と今思い出した。 
 自販機なのに私好みで本当に美味しかったな、とあの時を今思い出した。


( あの人、優しそうな人だった)

 あんな男と、別れられたら。
 次はこんな感じの優しい人を愛したい。
 そうホナミは思っていたが。
 ミカミの名前は出てくるのに、なんだか彼の顔はおぼろげになってきている……

 じんわりとそんな感傷に浸っていたロザリンドにアビゲイルが尋ねた。


「貴女は漢字は書ける?」

「かんじ、ですか……
 か、かんじですよね……かんじ、かんじって、どんなのでした?」

「……貴方のお名前、日本語で書けるか聞きたかったの」


 心配そうに見つめるアビゲイルの瞳に不安を覚えたロザリンドは一生懸命に考えた。


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