原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 勿論、金貨には『誰にも言ってはならない』の
口止めが含まれていることもわかっている。 


 深く考えないで、と言われたから考えない。
 こんなに楽なお願いならいくらだって繰り返せるし、そのノートに何が書かれているのかなんて、余計な好奇心は持たない。

 最近の若様とお嬢様のご様子がおかしいことは
使用人の誰もが気付いているが、誰もがそれを
口にしない。
 それがコルテス侯爵家に雇われ続けたいのなら
守るルールだから。



 お嬢様が首から下げていた細いシルバーチェーンの小さな鍵を握りしめたのを確認して、メイドは一旦、ロザリンドの部屋をそっと出た。
 自分が朝のお茶のワゴンを取りに行く間に。
 お嬢様がノートをゆっくり読めるように。


 今朝で完了した、とても割りのいい頼まれ事だった。
 明日からもお嬢様は何か申し付けてくれないかな、とメイドの足取りは軽かった。
 
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