原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
「王太子殿下の婚約者はグレンフォール公爵令嬢だ。
 殿下の後ろ楯となっている王太子派のトップのご令嬢との婚約が解消されるわけがないんだよ。
 それに、中立派のトップがコルテス侯爵家。
 今居なくなったけど、ランドール殿下を推していたのがクロエ妃実家のマクブライト侯爵家と
ウチのラザフォード。
 悪いのは俺だから申し訳ないけれど、君が
コルテスとラザフォードの婚約破棄の原因だ、と
知られているから……
 他の貴族は気を遣って、どこも君を受け入れないよ」


 もうこの王国でミシェルを養女としても、愛妾としても、受け入れる貴族は居ない、ということなのか。
 だから義父のフライ男爵は利用価値がなくなったミシェルを売ることにしたのだ。


「そんな、愛さえあれば……」


 デビュタントの会場で、寄り添って楽しそうに会話していた王太子殿下とグレンフォール公爵令嬢の姿をウェズリーは覚えている。
 婚約当初から仲睦まじいふたりの間に、どうやって彼女は割り込もうとしていたのか。


「……無理なのね?
 グレンジャーが私に『色々と大変』と言ったのは、そういうことなのね?」
 

 ミシェルの大きな瞳に綺麗な涙が浮かんだ。
 ウェズリーはその涙を拭う事はもうしないけれど。 


 綺麗で、あざとくて、愚かなミシェル。
 彼女の夢を潰してしまったことに心が痛んだ。
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