原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 理不尽に職を奪われた男を気の毒に思って、新しい人生を歩もうとしている、と見て見ぬ振りをしてくれたのか。


 どちらにしろ長居をすれば侯爵家の人間や使用人達に無用の情も出て、それは事の妨げになる。
 雇い入れ初日にやってしまおう、と決心がついた。


 午前中の休憩時間に外出をして荷馬車を借りる手配をして、小屋の下見をした。
 これは男にとって短期決戦なのだ。



 男が王城の近衛をしていた頃、何度か軽く関係を持っていた女は、王妃の側に付いている侍女だった。
 その女は側妃クロエの実家マクブライト家から
スパイとして送り込まれていた。


 クロエ妃が離縁されてからも彼女は王妃の、王家の動向をマクブライトへ送り続けた。
 そして意外にも情の深い女だったのか、あの騒動で王城を追われた男ともその縁を切るつもりは
無かったようで、昨夜密かに連絡が来て男は女と会った。

 久しぶりの情事の後、男の腕の中で女は話した。

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