原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 翌朝目覚めて。
 自分が28歳の日本人の三上広樹だったこと。
 温泉地に向かうツアーバスの事故で死んだこと。


 そして……自分が。
 編集者として担当していた、戸倉穂波が原作、佐々木千歌が作画した
『乙女は愛を知って花開く~底辺令嬢ですが王太子殿下に溺愛されています?~』の世界に転生した事を、受け止めた。



「オスカー様だけ、ご家族にお顔立ちが似ていらっしゃらないわね?」

 新しく雇われたメイドが休憩の折りに、同僚に
尋ねている声が聞こえたことがあった。


「それは触れてはいけない話よ」

 尋ねられたメイドが声を潜めて答えて……
 ふたりは笑って肩を震わせていた。



 王都の侯爵家の使用人達を見ていると、田舎の実家で働いていた彼女達のレベルの低さが、今ならよくわかる。

 兄達2人は両親に似ていたけれど自分が彼等に似ていない意味が。
 コルテス侯爵が後継に自分を選んだ理由が。
 踊り場から大理石貼りの玄関ホールまで十段以上の高さから叩きつけられたのに、大した怪我もなく済んだ事実が。

 物語の第2章を知る前世の記憶が戻ったことで納得できたオスカーだった。
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