原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 ランドールからの申し出を自分は受けてしまった。
 今更、帰ることは出来ない。


 
「今から第2王子殿下が君にダンスを申し込んでくる」

「……嫌です、断ってもいいでしょう?」

「王族に誘われて、断ることは許されない」

「……」


 ロザリンドの瞳がすがるように自分を見てくる。


「一曲だけでいい、侯爵家の為だと……」

 家の為だと、そんなことを言う自分が自分で許せない。
 ホナミの理想であるオスカーがこんな情けない男だとは。
 だが、貴族である以上……


「わかりました」

 ロザリンドも覚悟を決めたようで、背筋をすっと伸ばした。
 女性に手が早く、その分飽きるのも早いランドールに泣かされた令嬢は数多い。
 捨てられた本人達だけではなく、家族も皆我慢をしている。
 見境ないランドールのことを鬼畜と呼ぶ人間も居る。


『夢のようなひとときをあげる』

 ランドールの言葉はダンスの事を言っているのだと思いたかった。


 まだ完全に花開く前のロザリンドだ。
 どうか、ダンス一曲で殿下が済ませてくれますように。
 無理矢理にその蕾を開かせて散らそう等と、思わないでくれますように。

 今はそう祈るしかない3人だった。
 
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