原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
◇◇◇
「はっきり言うけれど、ほとんどのおウチが釣書を返して欲しい、と言って来ているわ。
まだのところもそう言ってくるのは時間の問題ね」
忌々しそうに母が嘆いた。
釣書とは、ロザリンドに申し込まれた縁談相手の自己紹介が綴られた書状だ。
あのデビュタントの夜の出来事が、コルテス兄妹の大立ち回りとして王都中の噂になっていたのだ。
男性であるオスカーが王族相手(ランドールと彼の護衛2名) に拳を振るったことは、相手が最悪な評判の第2王子だったことも併せて、武勇伝として彼の人気に拍車をかけたが……
ご令嬢のロザリンドがパンチを放ってランドール王子殿下を意識朦朧とさせた事は、別の意味での一大スキャンダルになっていたのだった。
「オスカーが追い付くまで、どうして待てなかったのかしら?」
高位貴族のご令嬢のなさる所業とは思えない、と『狙い目』だと縁組みを申し込んできていた家門は揃って撤回を申し入れてきていた。