栞の恋(リメイク版)
第一章 栞の恋
①妄想ストーリー
★
『栞ちゃんの運命の人は、本屋で出逢うのよ』
職場の更衣室の中に併設されている畳の部屋で、昼食を食べ終えたひと時。
唐突に、先輩社員が、そう断言する。
私、笹森栞(しおり)は苦笑いしながらも、“またこの人はいい加減な妄想を…”と、呆れ果てる。
自分と一回り以上年上の、この40代の契約社員は、何かにつけて想像力を働かせる、いわゆる【妄想女子】。
決して悪い人じゃないのだけど、平凡な毎日が続くと、何かしらの刺激がほしいのか、若い女子社員の恋愛話を欲しがり、ほとほと困ってしまう。
『高橋さん、何を根拠にまた…』
同じ課の先輩でもある村田さんが、見かねて助け舟を出してくれる。
そもそも、なぜこんな話になっているのかというと、いつものように恋愛ネタを欲した高橋さんが、“栞ちゃんに合う男ってどんな人だと思う?”と言い始めたことが、発端だった。
『根拠なんてないのよ』
悪びれる風でもなく、あっさりと言い放ち、
『でも、栞ちゃんに合う男って、絶対、本屋にいる気がするの』
何故か確信をもって断言する。
高橋さん(の妄想)によると、インドア派の私には、同じインドア派の《彼》がお似合いだとか。
例えば週末のデートも、二人でどこに行くでもなく、どちらかの家でまったりと、お互い着かず離れずの距離で、別々のことをしていても気にならないのがベストとのこと。
正直、妄想とはいえ、案外自分の理想系に近いのだけど…。
高橋さんの妄想話は、さらに続く。
『それも、ちょっと大きめなオシャレな本屋で、短時間じゃなく長めにいろんな本を見て周って、最終的には、1~2冊とかじゃなくて、大量にいろんなジャンルの本を買っていく人ね』
『紙袋とかで?』
同僚のエリカまで、まんまと高橋さんの妄想に捕まってしまう。
『そうそう!本屋なのに紙袋ね』
あまりに具体的すぎて、いつの間にかそこにいた他の社員も、本屋で本を探す男性が脳裏に浮かんできてしまうのだから、高橋さんの妄想も捨てたもんじゃない。
『栞ちゃんの運命の人は、本屋で出逢うのよ』
職場の更衣室の中に併設されている畳の部屋で、昼食を食べ終えたひと時。
唐突に、先輩社員が、そう断言する。
私、笹森栞(しおり)は苦笑いしながらも、“またこの人はいい加減な妄想を…”と、呆れ果てる。
自分と一回り以上年上の、この40代の契約社員は、何かにつけて想像力を働かせる、いわゆる【妄想女子】。
決して悪い人じゃないのだけど、平凡な毎日が続くと、何かしらの刺激がほしいのか、若い女子社員の恋愛話を欲しがり、ほとほと困ってしまう。
『高橋さん、何を根拠にまた…』
同じ課の先輩でもある村田さんが、見かねて助け舟を出してくれる。
そもそも、なぜこんな話になっているのかというと、いつものように恋愛ネタを欲した高橋さんが、“栞ちゃんに合う男ってどんな人だと思う?”と言い始めたことが、発端だった。
『根拠なんてないのよ』
悪びれる風でもなく、あっさりと言い放ち、
『でも、栞ちゃんに合う男って、絶対、本屋にいる気がするの』
何故か確信をもって断言する。
高橋さん(の妄想)によると、インドア派の私には、同じインドア派の《彼》がお似合いだとか。
例えば週末のデートも、二人でどこに行くでもなく、どちらかの家でまったりと、お互い着かず離れずの距離で、別々のことをしていても気にならないのがベストとのこと。
正直、妄想とはいえ、案外自分の理想系に近いのだけど…。
高橋さんの妄想話は、さらに続く。
『それも、ちょっと大きめなオシャレな本屋で、短時間じゃなく長めにいろんな本を見て周って、最終的には、1~2冊とかじゃなくて、大量にいろんなジャンルの本を買っていく人ね』
『紙袋とかで?』
同僚のエリカまで、まんまと高橋さんの妄想に捕まってしまう。
『そうそう!本屋なのに紙袋ね』
あまりに具体的すぎて、いつの間にかそこにいた他の社員も、本屋で本を探す男性が脳裏に浮かんできてしまうのだから、高橋さんの妄想も捨てたもんじゃない。
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