栞の恋(リメイク版)
細い路地裏から、駅までの広い通りに出ると、両脇には高い街路樹が立ち並び、それぞれの木には淡いブルーの電飾。
来月に迫ったクリスマスの為に、その先の広場の中央には、大きなもみの木が設置され、クリスマス用のオーナメントをせっせと飾り付ける設営スタッフの姿が見えた。
『ツリーか…随分気が早いな』
『そうですか?もう来月ですよ。むしろ遅いくらいです』
『そういうものか』
イルミネーションを引きだたせるために極力落とされた街灯のために、ブルーのイルミネーションが優しく光を放つ。
その光の中を、ゆっくりと歩き出すと同時に、また冷たい風が吹き抜けた。
『…今日はやけに冷えるな』
晴樹さんはそう口にすると、次の瞬間、ごく自然にスッと私の手を取り、そのまま自分のコートのポケットの中にしまい込む。
それはまるで、今までずっとそうしていたように、違和感のない所作で。
『栞、どうし…っ!』
思わず立ち止まって固まってしまった私を振り返り、ハタと自分の無意識な行動に気が付く。
『悪い』
慌ててポケットから差し抜き、包むように握りしめていた手は、すぐに解放してくれる。
放たれた手は、たった今まで包まれていたぬくもりから、一気に外気の冷たさにさらされた。
『すまない…つい』
『いえ』
私は戻された手がすこしでも温かさを逃さないようにと、もう一方の手で自らの手を包み込む。
晴樹さんは少し残念そうな表情をしつつも、さすがに強引に手を引くことはしない。
『じゃ、行こうか』
愛おしそうな眼差しを向けてそう言うと、駅までの広い歩道を、再びゆっくりと歩き出す。
来月に迫ったクリスマスの為に、その先の広場の中央には、大きなもみの木が設置され、クリスマス用のオーナメントをせっせと飾り付ける設営スタッフの姿が見えた。
『ツリーか…随分気が早いな』
『そうですか?もう来月ですよ。むしろ遅いくらいです』
『そういうものか』
イルミネーションを引きだたせるために極力落とされた街灯のために、ブルーのイルミネーションが優しく光を放つ。
その光の中を、ゆっくりと歩き出すと同時に、また冷たい風が吹き抜けた。
『…今日はやけに冷えるな』
晴樹さんはそう口にすると、次の瞬間、ごく自然にスッと私の手を取り、そのまま自分のコートのポケットの中にしまい込む。
それはまるで、今までずっとそうしていたように、違和感のない所作で。
『栞、どうし…っ!』
思わず立ち止まって固まってしまった私を振り返り、ハタと自分の無意識な行動に気が付く。
『悪い』
慌ててポケットから差し抜き、包むように握りしめていた手は、すぐに解放してくれる。
放たれた手は、たった今まで包まれていたぬくもりから、一気に外気の冷たさにさらされた。
『すまない…つい』
『いえ』
私は戻された手がすこしでも温かさを逃さないようにと、もう一方の手で自らの手を包み込む。
晴樹さんは少し残念そうな表情をしつつも、さすがに強引に手を引くことはしない。
『じゃ、行こうか』
愛おしそうな眼差しを向けてそう言うと、駅までの広い歩道を、再びゆっくりと歩き出す。