栞の恋(リメイク版)
④動き出した運命
★
…どちらかと言ったら、消極的な性格で、こんな風に自ら何か行動を起こすことなど、今までに一度も無かったかもしれない。
いつでも冷静沈着を心掛け、物事はよく考えてから実行に移す。
それが小さい頃からの、自分なりのスタンスだった。
その自分が今、見ず知らずの男性に店員が渡し忘れた物を届けるために、自ら志願して、エレベーターに向かって走っている。
先程、『私が渡してきましょうか?』と申し出た時の、店員の困惑したような…それでいて助かったと言わんばかりの嬉々とした顔を思い出す。
『…お知合いですか?』
『いえ。ただ、先程の男性なら覚えているので、今追いかければ間に合うかなと…』
正直に答えると、年配の方の店員が頭を下げ、
『では、申し訳ないのですが、お願いしてしまってよろしいですか?もし、いらっしゃらなければ、そのポイントカードは、そのままお客様が使っていただいて構いませんので』
手渡されたカードを開いてみると、今日作ったばかりで既に残り1個で2千円分の割引券となるものだった。
さすがにそれは気が引けるので、いなかったら戻ってくる約束をして、立ち去ろうとすると『すみません、これも一緒に』と、グリーンのしおりを渡される。
しおりのサービスも言い忘れたとのことで、カラーは取りあえずのものらしかった。
…どちらかと言ったら、消極的な性格で、こんな風に自ら何か行動を起こすことなど、今までに一度も無かったかもしれない。
いつでも冷静沈着を心掛け、物事はよく考えてから実行に移す。
それが小さい頃からの、自分なりのスタンスだった。
その自分が今、見ず知らずの男性に店員が渡し忘れた物を届けるために、自ら志願して、エレベーターに向かって走っている。
先程、『私が渡してきましょうか?』と申し出た時の、店員の困惑したような…それでいて助かったと言わんばかりの嬉々とした顔を思い出す。
『…お知合いですか?』
『いえ。ただ、先程の男性なら覚えているので、今追いかければ間に合うかなと…』
正直に答えると、年配の方の店員が頭を下げ、
『では、申し訳ないのですが、お願いしてしまってよろしいですか?もし、いらっしゃらなければ、そのポイントカードは、そのままお客様が使っていただいて構いませんので』
手渡されたカードを開いてみると、今日作ったばかりで既に残り1個で2千円分の割引券となるものだった。
さすがにそれは気が引けるので、いなかったら戻ってくる約束をして、立ち去ろうとすると『すみません、これも一緒に』と、グリーンのしおりを渡される。
しおりのサービスも言い忘れたとのことで、カラーは取りあえずのものらしかった。