かげろうの月
三度目の外泊で私は確信した。尚哉には女がいる……。
尚哉の通勤用の鞄が、ソファーの上に無造作に置かれていた。
この鞄の中を見たら真実が分かるかもしれない。浮気の証拠が見つかるかもしれない。
私は中を見てみたい衝動を抑えることが出来なかった。
尚哉が完全に寝入ったのを確認してから、B4サイズの黒い鞄のファスナーに手を伸ばした。
もうすでに心臓の鼓動は早く、夫が起きてしまうのではないかという緊張もあって、ファスナーを開ける指は汗ばんで震えていた。
ファスナーの音がしないように、
ゆっくりゆっくりと開け、目に入って来たのは、A5サイズの黒い手帳だ。
尚哉は特に几帳面ではないが、メモ魔のところがある。
手帳をそっと取り出し、三度目の外泊の、8月21日の日付けのページを開けてみた。そのスケジュール欄には、
「Y」のイニシャルとラブホテルらしきホテル名が書き込まれてあった。
ハートマークと共に……。
遡って、二度目の外泊の日と、最初の外泊の日を見てみると、やはり同じ事が書かれてあった。
「Y」とホテル名、そしてもちろん
ハートマークも……。
尚哉の通勤用の鞄が、ソファーの上に無造作に置かれていた。
この鞄の中を見たら真実が分かるかもしれない。浮気の証拠が見つかるかもしれない。
私は中を見てみたい衝動を抑えることが出来なかった。
尚哉が完全に寝入ったのを確認してから、B4サイズの黒い鞄のファスナーに手を伸ばした。
もうすでに心臓の鼓動は早く、夫が起きてしまうのではないかという緊張もあって、ファスナーを開ける指は汗ばんで震えていた。
ファスナーの音がしないように、
ゆっくりゆっくりと開け、目に入って来たのは、A5サイズの黒い手帳だ。
尚哉は特に几帳面ではないが、メモ魔のところがある。
手帳をそっと取り出し、三度目の外泊の、8月21日の日付けのページを開けてみた。そのスケジュール欄には、
「Y」のイニシャルとラブホテルらしきホテル名が書き込まれてあった。
ハートマークと共に……。
遡って、二度目の外泊の日と、最初の外泊の日を見てみると、やはり同じ事が書かれてあった。
「Y」とホテル名、そしてもちろん
ハートマークも……。