かげろうの月
 険悪な夫婦仲の状態で、経済観念のない夫が、本当に必要な分だけ生活費を払ってくれるのだろうか……。

 外泊を繰り返し、家に寝に帰って来るだけの今の夫と、繋がっているのはキャッシュカードだけだ。
これを渡してしまったら、私達夫婦はお終いになってしまいそうで恐かった。

「それは出来ない、(そんなことしたら私と子供は生活出来なくなる)渡せない!」と私。

「何でだよ、よこせ! 生活費は払うと言っているだろ!」そして夫はキャッシュカードを探し始めたので、私は夫より先に、カードの入っている財布を、引き出しから取り出し握り締めた。

 尚哉は財布を奪い取ろうと私に迫って来たので、必死に抵抗していると、
尚哉は逆上したのか、私の胸ぐらを掴み、揺さぶり始めた。
空いているもう片方の手で、財布を取ろうとしてきたので、私が抵抗を続けていると、掴んだ胸ぐらを尚一層激しく揺さぶってきたので、シャツの釦が弾け飛んで、フローリングの床を釦がコロコロと、転がって行く音が聞こえた。

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