かげろうの月
赤鬼の恐怖
結婚して 1年と6ヶ月。
生後8ヶ月の息子の陽斗の成長を2人で見守りながら、限りなくこのマッタリとした時間を、共有して生きて行くのだろうと思っていた。
恋人同士の時のようなトキメキは無くても、私はそれなりに幸せな時間を過ごしていた。そしてそれはずっと続くものだと信じていた。
信頼していたものに裏切られるのは、想像以上に辛かった。
まして、幼い子を抱えての裏切りは、
私に絶望感や空虚感を与えた。
そして、尚哉に対しては、憎悪に近い憎しみと、暴力に対する恐怖は、朝目覚めてから、夜眠りに付くまで、頭から離れることはなかった。
いつもの様に、尚哉は不機嫌で夜遅くに帰宅するなり、
「何でこんな所におもちゃを置いておくんだ」
「何で片付けないんだよ!」と言っておもちゃを蹴る。
「何でオレの言った通りにできないんだ!」
「お前はバカだ!」
「お前はアホだ!」と大声で言う。
私が言い訳や反発して言葉を返せば、それが気に入らなければ、私の足を蹴ったりして、暴力的になる。
一度、室内の格子になった引き戸のガラスに八つ当たりでして、拳で殴り
鋭角に割れたガラスでケガをした。
床にはガラスの血が落ちていた。