かげろうの月
未練
       
「キャッシュカードをくれ!」と尚哉に言われて、私は前の様に抵抗しても、もう勝ち目はないと思ったし、
抵抗したらまた暴力を振るわれるという恐怖心もあった。

「キャッシュカード渡してもいいけど、生活費は払ってくれるんでしょ? 家賃と公共料金も払ってくれないと、生活出来ない……。」と私はもう諦めに似た気持ちで言った。

「電気やガス、水道はお前も使っているんだから、料金の半分は払うよ。
家賃は払ってあげるよ」

「う〜〜ん。じゃ、半分でいいよ……」
私はこれ以外に何も話すことが出来なかった。

 私は結婚した時に仕事を辞めてしまった。
 独身の時の貯金と、結婚してから貯金したお金(私のヘソクリ)と、私の親から結婚祝いに貰ったお金(これは夫には内緒にしていた)で、毎月小出しにして生活して行くしかない。
夫からの生活費は0円になってしまったのだから……。

貯金が無くなったら、働くしかない……。
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