かげろうの月
 尚哉が言った「オレが稼いだ金は、オレがどう使おうとオレの勝手だ」
この言葉は一番聞きたくなかった言葉だった。
 
私と子供の存在を無視した発言だし「もういらない」と言われているのと一緒だ。
いっその事こと「離婚してくれ」と言われた方がましだったかもしれない。
また逆に、私から離婚を言い出すことも出来た筈なのに、何故それをしなかったのだろうと、自分自身の気持ちを冷静に考えてみた。
 
 まず第一に思うのは子供のことで、やはり男の子にはお父さんはいた方がいい(あんなお父さんでも…)
これから先ひとりで育てて行くのは大変。働いて子供と2人、満足して生活していくだけの収入は難しい……。

夫からの慰謝料や、養育費なんて期待出来そうもない……。

次に両親の顔が浮かんできた。
結婚してまだ1年と6ヶ月しか経っていないのに、もう離婚だなんて知ったら、呆れた顔で私を見るに違いない。
 私には三つ上の姉がいる。
姉は勉強も出来て、優秀で真面目だった。
そんな姉と比べられると、私は何もかも劣っている。
やっぱりお前はダメな娘なんだと両親は思うだろう。

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