かげろうの月
 2度目の浮気から25年経った。
私は、人生の折り返し地点はもうとっくに過ぎ、60歳の誕生を迎えた。

 私は今でも尚哉と、ひとつ屋根の下で2人で暮らしている。
息子は結婚をして家を出て行った。
結婚式には、父親、母親として出席して、息子の結婚を祝った。

何処にでもある家庭の、幸せ溢れる
素晴らしい光景だった。
こんな素晴らしい感動をくれた息子に感謝です。

 息子には本当に幸せな家庭を作って欲しいと願った。
そして……「浮気はするなよ」と心の底から願った。

 尚哉と私は、揉めない為に生活のルールを作った。
ゴミ捨て、お風呂掃除、は夫の仕事。
自分で汚した物は自分で片付けること
(キッチンを使った時)。これは当たり前。

 こうやって同居人のような生活を続けている。
同居人だから、愛情もないし、あそこまで裏切られたのだから、信用もゼロ。

 それでも時々思う。もし……私に経済力があって 、1度目の浮気の時に離婚していたら、どんな人生を送ることが出来たのだろうか……。

もっとマシな人生を送れていたのかなぁ………。

これはきっと……永遠に結論の出ない
のは分かっている。
 
日々の生活に疲れた、そんなある日、満月を見た。

 穏やかな自然の光、月の光は人の心を癒し、鎮めてくれる。

 川面に浮かんだ月が風に吹かれて、消えては、また浮かんだ。
儚い、かげろうの月よ……。

変わりゆく人の心を映し出しては、
    消えていくようだ……。



        完




< 31 / 31 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:5

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop