これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
母の容赦ない言葉に傷ついたりはしないけれど、さすがにこの年齢(とし)になれば、色恋沙汰の一つもない私に呆れてるだろうなとは思った。
私は居住まいを正し、きちんと話を聞く態勢を取ると、母も同じくきちんと話をしようと私に向き合った。

「でね、さっきの話に戻るんだけど、徹也くんとお見合いしてみる気ない?」

「……それって、どういうこと?」

「どういうことって、言葉の通りよ。あなた、見た目可愛らしいし、晶紀がその気になればお見合いの話なんていくらでもあるから心配しなくても大丈夫。でも、初めてのお見合いは、気心知れてる徹也くんでどう? そう堅苦しく考えなくても、『お見合いの練習』って思えばいいんだし」

母の言葉に、徹也くんの姿が頭に浮かんだ。
成長期に身長がぐんと伸びた徹也くんは、ちびっ子の私とは軽く三十センチ以上差がある。それだけの身長差があると、近くにいると見上げなければ顔が見えないわけで、首が痛い。

ただでさえ高身長は、女性からモテるポイントが高いのに、顔立ちも正統派のイケメンだ。加えて学生時代からスポーツで身体を鍛えているから、筋肉がつくところについて引き締まっている。黙っていたら、芸能人と間違えられるくらいに全てが整っているのだ。
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