これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
「お見合いは、いつかは経験するだろうって思ってたから別にいいんだけど……なんで練習? それに練習相手が徹也くんって、このことに徹也くんはOKしてるの?」

「晶紀って、お見合いの席で突拍子もないことしでかしそうじゃない? 徹也くんもそろそろお見合いの話があるって言うし、徹也くん側も晶紀で練習すれば緊張も解けるんじゃないかしらって、美津子(みつこ)ちゃんとも話をしていたのよね」

美津子ちゃんとは徹也くんの母親のことで、母親同士が学生時代からの友人だ。この様子だと、親同士が勝手に盛り上がっただけで、徹也くんの了承を得ているわけではなさそうだ。

「突拍子もないことって、なんか聞き捨てならないんだけど……。って、徹也くんの許可取ってないんじゃない。本人の許可なく勝手なこと言わない方がいいと思うよ」

「まあそうなんだけどね。美津子ちゃんもそろそろ徹也くんに身を固めてほしいのよ。浮いたお話も聞かないし。で、幼馴染の晶紀がお見合いするって知ったら、そろそろ徹也くんも本気で婚活してくれるんじゃないかなって思うじゃない? お互いがお見合いの練習相手なら、気心知れてるから緊張もしないでしょう? 何なら二人が本当に結婚することになってくれても全然いいわよ? 私が晶紀の年齢の頃は、もう結婚していたしね」
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