これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
こうやって時々母は自分の経験を私に語ってくれるけど、二十八歳という年齢は今の時代ではまだ独身の人も多く、結婚と言われても今一つピンとこない。
加えて最近は、出産するなら体力のある若いうちにと、耳にタコができるのではないかと思うくらい口にする。
たしかに子どものことを考えたら、結婚するのは早いほうがいいのはわかっている。

だからこそ、私の生まれて初めてのお見合い相手が幼馴染の徹也くんなら、緊張することもないだろうとでも考えたのだろう。
母も美津子おばさんも、私たちのことを心配してのことだとは思うけれど、あまりこういったことは軽率に首を突っ込まない方がいいのではと思ってしまう。
この勢いでは、私がここで同意してしまえば、即お見合いは実行されるに違いない。

「まあ、そこまで深く考える必要はないけど、徹也くんが練習相手として承諾してくれたら、晶紀も問題ないでしょう? さっきも言ったように、何ならこのご縁で徹也くんと結婚してもいいのよ? 徹也くんなら小さい頃から知ってるし、晶紀の扱いにも慣れたものでしょう」

「え、ちょっと待って。勝手に暴走しないでよ」

「暴走だなんて失礼ね、あくまでお母さんの理想を口にしただけよ。でも考えてみなさい。家族以外であなたの性格を一番理解してるのは誰? 人間、素のままを受け入れてくれる相手と一緒になるのが一番楽よ」

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