これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
母の意見はごもっともだ。
私のありのままを知っている徹也くんと一緒になれたら一番楽に違いない。
打算的な考えかも知れないけれど、徹也くんは見た目もいいし、お互いの黒歴史も知っているから今さらながら私に幻滅することはない……だろう。

「何てったっけ、徹也くんみたいに見た目も中身もパーフェクトな子を『スパダリ』って言うの? 晶紀にとって徹也くんは正しくスパダリじゃない?」

「スパダリ、ねぇ……」

スパダリって、たしか理想的な彼氏を意味するんだよね。どんな自分も受け止めてくれる包容力と優しさを持ったイケメン……
果たして徹也くんは、どんな私でも受け止める覚悟はあるのか。

母は、私がどうにか行き遅れにならないようにと必死だ。

「それに嫁姑問題も、美津子ちゃんなら安心でしょ?」

たしかに結婚となると、それは避けては通れない。
美津子おばさんの顔が頭に浮かんだ。

「まあ、最終的には二人の気持ち次第だし、とやかくは言えないけど。……でもね、どっちにしろ将来的に誰かとお見合いすることにはなるんだし、これは練習なんだって軽い気持ちで会ってみない?」

母もこれは正式なお見合いではなく、あくまでも『練習』だと強調している。徹也くんが承諾しなかったら、この話は立ち消えるのだ。きっと徹也くんはこの話を断るだろうと呑気に考えた私は、母の無茶振りな提案を受けることにした。

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