これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
お見合い本番に備えて、母に言われるがまま釣書を書き、スマホの中から、比較的まともに写っている画像をプリントアウトして母に手渡した。
母には「こんなふざけた写真を渡すだなんて」と呆れられたけど、動物園に行ったときの写真のどこが悪いんだろう。猿山の前で、可愛らしくお猿の真似をしているだけなのに。

あまりにも母が文句を言うので、私は自分のスマホの写真フォルダを見せると、母はがっくりと肩を落とした。写真フォルダの中には、ろくな画像がない。『比較的まともに写っている画像』だと言った私の言葉が正しかったことを、そこで初めて理解したようだ。

母は自分のスマホで私を撮影すると、それをプリントアウトして徹也くんに渡すこととしたようだ。仕事から帰宅した私は、化粧も崩れてひどい顔だ。文句を言っても、母に言わせると化粧崩れしている私の姿の方が、まだ『まともな写り』だと言って、取り合ってもらえない。

納得はいかないけれど、まあ相手は徹也くんだしいいかと半ば諦めると、それを母経由で徹也くんに渡して貰い、後日徹也くんの釣書と写真も受け取った。

そしていざお見合い当日、指定されたお洒落なカフェへと赴いた。これはお見合いの練習だし、そこまでかしこまる必要はないだろうと普段着で出向いたのに、徹也くんは仕事中だったのかスーツ姿で現れた。見事にちぐはぐな組み合わせだったけれど、ビジネスで利用する客やデートと思われる客も何組かいたので、特別浮いた存在にはならなかった。
< 14 / 62 >

この作品をシェア

pagetop