これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
「まあ、堅苦しいことは抜きにして、食事しながらこれからのことを話し合いましょう」

徹也くんの父、正昭(まさあき)おじさんの言葉に、私たちは注がれた桜茶に口をつけて緊張を解いた。両家の親たちは旧知の仲であるものの、やはりこの日を迎えるに当たり、緊張は隠せない。
それは当事者である私と徹也くんも同じだ。

徹也くんの家は、地元でも大手の建設会社を経営しており、彼は一人息子で後継者。いわゆる御曹司というやつである。

私の家も、地元では老舗の不動産会社を営んでいて、私は高田家の一人娘だ。そのため私が結婚したら、徹也くんの会社に新たに不動産部門を設け、ゆくゆくは高田家の業務を移すことになっている。
そう、これはいわゆる業務提携が絡む政略結婚なのだ。

「晶紀ちゃんもそんなに緊張しないで」

正昭おじさんの言葉に、私はぎこちない笑みを返した。

先ほど結納も終わり、今は部屋に食事を運んでもらい、結婚式の日取りなどこれからのことを親たちが話し合っている。

親同士、特に母親たちが張り切って、いつの間に取り寄せたのかテーブルの上には結婚情報誌や結婚式場などのウエディングプランが掲載されているパンフレットがズラリと並べられ、それらを眺めながら話を進めている。

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