これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

その女性、誰ですか?

徹也くんが女性を連れていることに私が戸惑っていると、徹也くんも同じように驚いたのか、私と弘樹の顔を交互に見比べている。

徹也くんが一緒に連れている女性は、私と真逆でスラリと背の高いスレンダーな美人だ。仕事終わりに会っていたのか、二人ともスーツ姿。こうして見ると、身長も格好もバランスが取れていて、とてもお似合いだ。

対する弘樹は身長はそこまで高くはないものの、人の良さそうな顔立ちをしている。
それこそ学生時代から弘樹と一緒にいるので、周囲から私たちは恋人と勘違いされていただけに、事情を知らない徹也くんたちからはどのように見えるだろう。
徹也くんが連れている女性は私たちを、弘樹は徹也くんとその女性を見つめている。

「あれ、徹也くん……凄い偶然だね」

「本当に……まさかここで晶紀に会うとは思わなかったよ。……ああ、紹介するよ。こちら婚約者の高田晶紀さん」

徹也くんは連れの女性に私のことを『婚約者』と紹介した。
連れの女性に私のことは紹介したくせに私には彼女の紹介がないのだから、私はどうすればいいのだろう。とりあえず会釈だけはしてみたけれど、一緒にいる女性は驚いたのか、一瞬目を大きく見開き、まじまじと私たちを見つめた。 
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