これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
「話が逸れたな、元に戻すぞ。連れの女、見た?」

私は、弘樹が何について『見た?』と聞いているか分からず、言葉の続きを促した。
 
「あの女も指輪してただろ、右手だったけど」

焼酎を飲みながら爆弾を投下した。
徹也くんが女性と一緒だったことが衝撃でそこまで見る余裕なんてなかったのに、第三者の弘樹はどこまでも冷静だ。

「デザインまでは見えなかったけど、ぱっと見似たような感じのやつだったから、もしかしたらあれ、ペアリング……」

その言葉に、私は固まった。
さっきまで、弘樹が私に言った『現在進行形でほかに女がいるかも知れないんだよ』の言葉が、急に現実味を帯びてきた。
弘樹も私が動揺していることに気づいたようで、咳ばらいをした。空気を変えたかったのだろうけど、私は言葉が出てこないし、弘樹も気まずくて黙ったままだ。

「まあ、結婚するまでまだ時間はあるし。それまでに怪しいところがあれば話し合って、それで納得いかないなら婚約破棄すればいい。最悪バツイチになったとしても、最近はそういう人多いから、誰も何も言わないって。それに晶紀には非がないんだから、堂々としてればいいよ。なるようになる。……まあ飲め! 今日の分は俺が奢るから」

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