これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
「お嬢ちゃん、修学旅行生? 記念に名前彫ってあげるから、買っていかない?」

露店のお兄さんに声をかけられた。
いつもなら「お嬢ちゃん」と呼ばれると、私のことを小学生と勘違いしているとスルーするところだけど、立ち止まったのは自分用のお土産をまだ買っていなかったからだ。

声をかけられ立ち止まった私に、お兄さんは笑顔で手招きする。私は釣られて店先に並べられている品に目をやった。
露店の簡易照明に照らされて、陳列された品物はキラキラと輝いている。中学生の私にはどれもお手頃価格だったことも手伝って、つい吟味していると……

バレッタに目が止まった。
バレッタは、ローズクォーツのような淡いピンク色のもので、猫が横たわっているシルエットのデザインだ。一目で気に入り、それを買おうと手を伸ばしたとき、女子高生らしき二人組がやってきた。どうやら私と同じく修学旅行生みたいだ。二人のやり取りが、自然と耳に入ってくる。

「ねえ、指輪ってさ、つける指によって、意味や効果が変わってくるらしいよ」

「えー、そうなんだ。じゃあ、願掛けとかもできるの?」

何やら興味深い内容だ。私は品物を見るふりをしながら二人の会話に聞き耳を立てる。

< 33 / 62 >

この作品をシェア

pagetop