これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
「うん。恋愛の願掛けに薬指ってのは何となくわかる。ほかの指にも色んな意味があるんだけど、左手親指は『信念を貫く』って意味なんだって。目標を実現させたい、夢を叶えたいなど自分の信念を貫いて、パワーを持てる指輪の位置らしいよ」

うんちくを語る女子の言葉を聞きながら、迫りくる高校受験への願掛けに、私も自分用に一つ購入しようかと心が傾いた。

「へえ、すごいねそれ。左手親指最強伝説じゃん」

「じゃあ、お揃いで指輪買おうよ」

「うん、いいよ」

二人組の女子高生は、それぞれ気に入った指輪を購入しようとお兄さんにそれを差し出した。すると……

「名前入れのサービスがあるけど、どうする?」

女子高生たちはお互い自分の名前を告げ、指輪の裏側にその場で名前を入れてもらっている。
それを横目に、私も気になって陳列されている指輪を眺めてみた。

おもちゃだからすぐに錆びたり壊れたりするだろうけれど、ずっと指につけるものでもない。高価なものは失くしたときのダメージが大きく、私くらいの年齢なら、この程度のおもちゃで充分だ。
女子高生たちが露店から立ち去ると、私はバレッタと指輪をお兄さんに手渡した。もちろん名前のサービスも忘れていない。

このバレッタは、数年後に留め具の部分が壊れてしまったけれど、今でも大事に引き出しの中に仕舞っている。

そういえば、翌年に大学受験を控えた徹也くんと同じく翌年に高校受験を控えた自分のために、晴明神社で学問のお守りを買ったよな……

晴明神社でお守りを買ったところで夢から覚めた。
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