これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
今はもう食べることに集中しようと、目の前に並べられている御膳を着物の上にこぼさないよう、そっと口に運んだ。
でも、私の正面に座って私のことを黙って見つめる徹也くんの視線に、時折り居心地の悪さを感じてしまう。

食事を終えると、後はお決まりの『若い人たちで』とその場を追い出されたので、徹也くんと並んで庭を散策することとなった。

徹也くんは身長が百八十センチ以上あるイケメンで、身長が四捨五入で百五十センチ(正確には百四十八センチ)と小柄で童顔な私が隣に並ぶと、見事にバランスが悪い。
幼馴染だった徹也くんと、こうしてお見合い(の練習と聞かされていたのになぜこうなった)を経て婚約するなんて、信じられない思いと照れ臭さで、未だこれは夢なんじゃないかと思ってしまう。

会話はなくとも、徹也くんは後ろをついて歩く着物姿の私に気を遣い、ゆっくりと歩いてくれている。そんな何げない心遣いに、履きなれない草履も手伝って、ますます歩き方がぎこちなくなる。

日本庭園に設置されている飛び石は表面がデコボコしているため、草履が引っかからないよう気をつけながらのんびりと散策中、ふと徹也くんの手元に視線が向いた。

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