これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
徹也くんの靴はある。珍しく靴が二足並んでいるのは、お昼から履く分を出しているのか。

「徹也ね、昨日お友達とうちで飲んでて、まだ寝てるのよ。晶紀ちゃん、悪いんだけど起こしてきてくれる?」

今日はよく頼みごとをされる日だ。
私は頷くと、階段を上がり徹也くんの部屋へと向かった。

私は徹也くんの部屋の前で深呼吸すると、恐る恐るノックした。
ノックしたはいいけれど、返事はない。
再度ノックしてみても、状況は変わらない。
私はそっとドアを開けた。

そして、見てはならないものを見てしまったのだ。

何と、月曜日に武志さんのお店で見かけた女の人が、徹也くんと一緒に床に転がって寝ていたのだった。

二人とも服を着ているとはいえ、さすがにこれはアウトだろう。
月曜日に会った彼女は、お尻が隠れる丈のざっくりとしたニットにデニム加工のレギンスを履いていて、長い髪は寝乱れている。
対する徹也くんは、部屋着でトレーナーにジャージ姿だ。

『徹也ね、昨日お友達とうちで飲んでて、まだ寝てるのよ』

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