これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー

見た目に騙されてはいけません

何であの人が一緒にいるんだろう。
やっぱり、この結婚は形だけで、あの人が本命なの?

二人の姿を見て固まってしまった私をよそに、弘樹は徹也くんに手を挙げて合図を送ると、徹也くんもそれに気づき、こちらへとやってくる。

「遅くなってごめん」

私たちのテーブルを見て、器がないことに気づいた徹也くんは、表情を曇らせた。

「もしかして、お昼、何も食べてないのか? 何か軽く摘みながら話をしようか。晶紀、ちょっと奥に詰めてくれる?」

徹也くんの言葉に、私は荷物を寄せて奥に移動すると、私の隣に徹也くんが、そして弘樹の隣に連れの女性が座った。

私と弘樹が隣に座るのも変だし、婚約者だから私と徹也くんが並んで座るのはわかるけど、見ず知らずの女性と弘樹が並んで座るのもおかしな話だ。

改めて斜め向かいに座る彼女を見ると、スラリと背が高く、ほっそりとしている。先ほどまで寝乱れていた髪の毛はサラサラになっている。
肌もきちんと手入れが行き届いており、女性の私から見ても綺麗な人だと認めざるを得ない。

二人が席に着くと武志さんがグラスに水を入れてやってきたので、徹也くんはアイスコーヒーを二つとパンケーキを頼んだ。

武志さんがオーダーを取り、退席すると、おもむろに弘樹が口を開いた。

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