これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
それにしても、弘樹が婚約者候補だったという話は初耳だ。この前弘樹が私を家に送ってくれたとき、母と弘樹、二人ともそんな素振りを見せなかったのだ。これは帰って母に問いつめなければ。
そんな私の思いとは裏腹に、徹也くんはハッとした表情を浮かべると、彼女のことを説明するのを忘れていたと、今さらのように話し始めた。
「そう言えば、この前紹介してなかったよな、ごめん。こちらは坂下……」
そこへ、最後まで徹也くんが紹介する前に、彼女が割って入った。
「初めまして、私、坂下雪奈です。晶紀ちゃんのお話は、随分前から徹也から耳にタコができるくらい、よく聞かされてたから、こうしてお会いできて嬉しいわ」
にこやかに挨拶をされ、私と弘樹はその笑顔に圧倒された。坂下さんの声は掠れ気味で、女性にしては少し低い。
そして坂下さんの右手薬指には、弘樹がチェックしていた通り、しっかりと指輪が光り輝いている。
「えっと……、あ、初めまして。高田晶紀です」
まさかこんなふうに面と向かって会話をすることになるとは思わず、私は動揺が隠せずしどろもどろだ。弘樹は、アイスコーヒーを飲み干しながら、その場を見守っている。
そんな私の思いとは裏腹に、徹也くんはハッとした表情を浮かべると、彼女のことを説明するのを忘れていたと、今さらのように話し始めた。
「そう言えば、この前紹介してなかったよな、ごめん。こちらは坂下……」
そこへ、最後まで徹也くんが紹介する前に、彼女が割って入った。
「初めまして、私、坂下雪奈です。晶紀ちゃんのお話は、随分前から徹也から耳にタコができるくらい、よく聞かされてたから、こうしてお会いできて嬉しいわ」
にこやかに挨拶をされ、私と弘樹はその笑顔に圧倒された。坂下さんの声は掠れ気味で、女性にしては少し低い。
そして坂下さんの右手薬指には、弘樹がチェックしていた通り、しっかりと指輪が光り輝いている。
「えっと……、あ、初めまして。高田晶紀です」
まさかこんなふうに面と向かって会話をすることになるとは思わず、私は動揺が隠せずしどろもどろだ。弘樹は、アイスコーヒーを飲み干しながら、その場を見守っている。