ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
(陛下の(たくら)み、それが私の追放理由に繋がるということかしら)

 おそらくここから私が国外に出されるという話になるというのは予想がついた。

 でも理由は実のところよくわかっていない。

 ゲームでは魔王の後継者である私は隣国に送られたと事実だけシェリアに伝えられ、どんなやり取りが成されたのか作中でも謎とされているからだ。

『そう(わめ)くな。まずは話を聞け。現在休戦中の隣国、アルゲニア王国。そこに聖女リルアを人質として送りたいとワシは考えておる』

『はぁ? アルゲニアなどにリルアを? それはどういう趣向でございますか?』

 エルドラド殿下は意味がわからないと首をひねる。

(やっぱり私はアルゲニアに送られるんだ)

 殿下とは対象的に私は予想どおりの流れになったと心の中で頷いた。

 しかし、よく考えたらこれは変な話だ。

 ゲームのプレイヤーとしての私は厄介者払いという意味で隣国に追放されたのだとばかり思っていた。

 でも、当事者となって気づいたが早期に私を殺す選択もあったのだ。

 なんせエルドラド殿下にも陛下にも私に対する情はない。復活を呑気(のんき)に待つ理由もない。

 それなら厄介ごとが起こる前に私を殺しておこうというほうが賢明だと思われる。

『実はのう。アルゲニアにスパイを送っていたことがバレて、再び戦争が始まりそうなのだ』

『そ、それは真ですか!?』

 なんと休戦したての元敵国にちょっかいを出したことが知れて大問題になっていたのか。

 エルドラド殿下も初耳らしく目を丸くしている。

『嘘などつくはずあるまい。そこでワシは聖女を人質として送ることを考えた。神託を受けた聖女はアルゲニアでも信仰の対象となるほど尊いからのう』

 アルゲニア(あちらの国)でもフェネキス(この国)と同じくエーメル教が国教となっており、聖女が特別な存在なのは知っていた。

 もっともアルゲニアには神託を受けられる聖地がないので聖女がいない。

 その代わりとして国防や癒やしに関わる魔道具や錬金術が発達しているのであるが――。

 なるほど。国王は冷え切った両国間の関係修復に聖女である私を差し出そうと考えているのか。

 だから陛下は私に利用価値があると、そんな言い回しをした。
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