ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
『信頼関係回復のために聖女を差し出せば、アルゲニアも黙るはず。戦争が避けられるのなら、国益を守ることに繋がるとは思わんか?』

『ううむ。陛下の仰ることはわかりますが、それでもアルゲニアで魔王としてリルアが覚醒したら――』

『結構ではないか。アルゲニアで魔王として覚醒しても被害を受けるのはかの国だ。くっくっくっ』

 ほくそ笑みながら、恐ろしいことを口にする国王陛下。

 まさかそんな陰謀があったとは知らなかった。

 つまり国王陛下は私がアルゲニアで魔王になることを望んでいる?

(まるで人のことを時限爆弾みたいに扱ってくれるじゃない)

 その非人道的なやり口に私は明らかな嫌悪感を抱く。

 表向きは国民からの支持もあり、親しまれている国王陛下であり、ゲームでも優しくシェリアを支援していたので、この裏の顔には驚いた。

『魔王が復活したら討伐を大義(たいぎ)として国力が弱まったアルゲニアに軍隊を進行させればよい。古文書の解析はさっそく進ませておるから、その時までには討伐方法もわかるだろう』

『そ、それでは、陛下は最初から――』

『魔王のついでにアルゲニアをそのときこそ滅ぼしてやろうぞ。あーはっはっはっ!』

 陛下は邪悪なる野望を語り高笑いする。

 うわー、やっぱりこの陛下めちゃめちゃ悪人だ……。

 ゲームの続編は主人公の故郷で新たな巨悪が!?みたいな(あお)りだったけど、もしかしたらこの人が次期ラスボスなのだろうか。

 あり得そうだなぁ。こんな裏エピソードをゲームで隠す意味があるとは思えないし、シェリアと私にとっては悲劇の元凶みたいな人だし……。

 エルドラド殿下もあまりにも非道な父親の計画を聞いてかなりドン引きしているようだ。

『エルドラドよ、そのときこそお前が全軍の指揮を執るのだ。お前にはフェネキス軍総司令官という役職を与えてやろう』

『そ、総司令官ですと!? 栄誉あるフェネキス軍の総司令官の職をこの俺に!?』

 しかしながらエルドラド殿下は国王陛下の甘言を聞くと元気になる。

 まるで散歩に行く前の飼い犬みたいに無邪気な顔をして、パァーっと明るい表情になった。

(さすがは陛下。息子の英雄願望をよくご存じで……)

 この瞬間、私は隣国に送られることを確信する。

 なんせこれでもう国王陛下を止められる者は誰一人としていないのだから。
< 13 / 32 >

この作品をシェア

pagetop