嘘も孤独も全部まとめて
飲み屋で知り合った男が女に大量の酒を飲ませ、ホテルで暴行した上に財布を盗ったと言う女と、知り合った時にはほぼ素面(しらふ)で勝手に一人で酒を飲み続けて酔い潰れたのでホテルに連れて行った、金は女自ら財布を出してきたと言う男。

どちらの証言も真っ正面からぶつかり、捜査に時間がかかった案件だった。

でもその時にはまだ事件として立証できず、捜査状況も外部には漏らしてはいけないので何も言えなかった。

ただ夫婦とはいえ居場所を監視された上にあらぬ疑いをかけられ、もう限界だった。


『もう……やめよう…』


『どうして?』


さっきまであんなに俺のことを睨みつけていたくせに、突然泣きそうな顔になる。
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