嘘も孤独も全部まとめて
考えることを止め、そのままこの指に身を委ねたら楽になれるのか。


そんな思いが頭を(よぎ)る。


「無理だって」


何とか思いとどまり、杏里紗の両肩に手を置いて体を引き離した。

抵抗されると思いきや、あっさりと離れる。


「因幡さんが信用できなくても、あたしはずっと変わらない」


俺は一体どんな顔で杏里紗を見ているんだろう。


「あたしのこと、好きになってほしいなんて言わない。どんな風に扱われても構わない。……だから、ずっと傍に居させて」


ずっと泣きそうだった杏里紗が微笑んだ。
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