嘘も孤独も全部まとめて
「今、他のお客様もいらっしゃらないのでお二人でごゆっくりお決めください」


「え?」


試着室の前でしばらく待たされた後、店員が中から出てくる。

それにしても、何を決めるのかが分からない。

その場で立ち尽くしていると、カーテンの隙間から杏里紗が顔を覗かせた。

まるで生首状態だ。


「因幡さん」


「何だよ」


「似合ってるか見てほしいんだけど」


「似合ってる似合ってる」


見てほしいと言われたところで、見られるわけがない。
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