嘘も孤独も全部まとめて
「来る時、因幡さんと会わなかったんですか？」


真正面に立つ安藤さんを見上げる。

あたしと因幡さんは結構な身長差があるけれど、安藤さんとだったらちょうどいいかもしれない。

赤いビスチェ風のトップスに白いスラックス、黒いエナメルのハイヒール。

頭には黒のサングラスを乗せ、どこから見ても綺麗な大人の女性だ。

隣同士に立つ二人を想像すると、胸が痛くなる。


「私、車で来たの。マンションから出てきたのを確認してから車から降りてるし、彼は車がないからすれ違うことはないわ」


因幡さんのことは何でも知ってるって言いたいの？


にっこり微笑むその姿も、挑発されているようにしか見えない。
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