嘘も孤独も全部まとめて
「因幡…さ――」


頬を包む因幡さんの手。

そして唇に触れる因幡さんの唇。


「何……で…」


溢れる涙。


「嫌……だったか?」


首を振るだけで精一杯。


「じゃあ、何で泣いてんだよ」


困ったように笑う因幡さん。


「分かん…ない…。ビックリしたのと……嬉しくてっ――…」


神様、お願いします。

このまま時間を止めて下さい。


「とりあえず、行くか」


あたしの頭を撫で、玄関を出ようとする因幡さんの服を引っ張って首に両手を回す。

頑張って背伸びをすると因幡さんが屈んでくれた。


「しょっぱ」


因幡さんが笑う。

初めての深いキスは、涙の味がした。
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