嘘も孤独も全部まとめて
「原因の『因』に八幡の『幡』、透明の『透』」


「やはたって、何?聞いたことない」


知らないから素直にそう言っただけなのに、男は大きなため息を吐いて立ち上がった。

そして紙とペンを手に戻ってくる。

何かを書いてあたしに手渡してきた。


「それで『いなばとおる』」


「へぇー」


難しい漢字。

漢字が難しいと、人間も難しくなるものなのか。


「で」


「『で』?」


「お前の名前は?俺が名乗ったんだから、ちゃんと名乗れよ」


「田中花子」


「しつこい」


ちぇっ……。
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