嘘も孤独も全部まとめて
「えへへへ…」


『妻』という言葉に頬が緩む。


「ニヤけ過ぎだろ」


透も呆れたように笑っている。


「だってぇー」


ずっと傍に居ていいって…。

公に認められたんだもん。

これで、透の隣に居ても透が責められることはないんだから。


「杏里紗」


役所を出たところで呼び止められた。

振り替えると真面目な顔をしてあたしを見ている。


「な…何?」


たった今、婚姻届を出してきて幸せな瞬間なのに、透の真剣な眼差しに何があるのかと不安が過った。
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