嘘も孤独も全部まとめて
目の前のグラスは安藤さんが飲んでいたワイングラスと同じ形をしている。


……やだな。


何でもかんでも、安藤さんの姿がちらつく。

彼女の口からハッキリと透のことが好きだと聞いたことはない。

だけど同じ女として、透のことを好きだという気持ちは嫌でも伝わってくる。

窓ガラスに映る自分の姿。

どう見ても大人な安藤さんには太刀打ちできない。


……どうして透はあたしを選んでくれたんだろ…。


薬指に嵌めた婚約指輪を指先で回してみる。

考えても答えなんて見つからなくて。

指輪を抱え込むようにギュッと手を握り締めた。
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