嘘も孤独も全部まとめて
『まだ居るんですか!』

そんな表情だ。


俺の顔を見たまま、斜め前の自分の席に座る。

戸田の視線から逃れるべく、戸田とは反対の方向を向いた。


「中野杏里紗」


『何?なかの?』


「大中小の『中』に野原の『野』、(あんず)の『杏』に(さと)の『里』、糸偏に少ないと書いて『紗』。何か出てこないか調べてほしい」


『今日中?』


「そうだな」


家に帰ってアイツの身柄をどうするか。

安藤の報告次第だ。


「頼んだ」


『はいはい』


ため息を吐いた安藤の声を聞いた後、受話器をそっと下ろした。
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