嘘も孤独も全部まとめて
床に置いていたバスタオルで杏里紗の体を拭く。


「やっ…いーよ、自分で拭く。何か……恥ずかしい…」


「俺が拭きたいの」


バスタオルを奪おうとする杏里紗の手を制し、頭からガシガシ磨くように拭いた。


「やっ、痛い痛い痛い!」


「あ…悪い…。力加減が分からなくて…」


「…奥さんに……してあげたことないの?」


タオルの隙間から俺を見上げる。


「ないな」


一瞬考えてはみたものの、高校の時はお互い実家だったし、卒業してすぐに官舎に入ったし、結婚してからはほぼすれ違いの生活だったから、一緒に風呂も入ったことがなければ、こうやって体を拭いたこともない。
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