嘘も孤独も全部まとめて
「触んじゃねーよ」


肘でその手を払うと、フグみたいに膨れた。


「ケチー」


「何が『ケチ』だよ、バカ」


「あーあ、入籍だけじゃなくて結婚式までしちゃうなんて…。これで本当に手の届かない人になっちゃった…」


しつこく俺の腕を指先でグリグリ押す。


「え……」


向かい合って立つ杏里紗の表情が、一瞬で曇った。

俺を見上げる視線が驚くほど冷たい。


「ちっ、違う!何もないから!」


「そーそー。ホンマに何もないから安心してなー」


勢いに任せて俺の肘に腕を回し、ギュッとしがみつく。


「ちょっ…、マジでやめろって!」


わざとなのか本気なのか分からない。
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