嘘も孤独も全部まとめて
「予定にはございませんでしたが、急遽(きゅうきょ)この場をお借りしてお話したいことがあると、新婦杏里紗様のお母様より(うけたまわ)りましたので、お時間を頂戴いたしました」


お母…さん…?


母親が口を真一文字に結び、俯きがちにスタッフの隣に立った。


「よろしくお願いいたします」


マイクを手渡され、会釈する母親。

その様子を固唾を飲んで見守る。


「この度は…お時間を頂戴しまして、ありがとうございます…。……杏里紗…、透さん…。ご結婚おめでとうございます」


『アンタ』や『お前』と呼ばれた記憶しかない母親に名前で呼ばれ、涙が頬を伝った。
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