嘘も孤独も全部まとめて
「――っ、ふ…」


涙で視界が歪む。

込み上げる嗚咽を必死で押し殺した。

不意に肩に手を置かれ、透の胸元に引き寄せられる。

見上げると、視線は母親に向いていた。

ものすごく険しい表情。

それでも、肩に置かれた手はあたしの肌を優しく撫で擦ってくれていて。

透の胸に凭れ、目を閉じた。


「まだまだ恋愛したい自分と…。子供が居るんだから頑張らないとという自分と…。最初は葛藤もしました。……でも、私はまだ女で居たかったんです…。杏里紗の存在が邪魔で……。色々なことを…見て見ない振りをしていました」


思い出したくもない過去が、次々と脳に溢れ出てくる。
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