嘘も孤独も全部まとめて
振り返った母親があたしの頬に手を添えた。


「ごめんなさい」


何に対しての謝罪なのか。

けれど、何度も謝る母親にただひたすら首を横に振った。


「お母…」


言葉が続かない。


「まだ…私のこと……『お母さん』って…呼んでくれるの?」


「お母さんは…。あたしにとってのお母さんは……。世界に……たった一人だけ…だから…」


母親の顔をちゃんと見たのはいつ振りだろう。

涙でマスカラが取れ、パンダみたいになっている。


「あり…がと…」


抱き合って少しだけ笑い、たくさん泣いた。
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