嘘も孤独も全部まとめて
「ん」


ポケットから指輪を取り出す。

肌身離さず持ち歩いていた透の指輪。

差し出すと、それを手に取った透がくるりと体を反転させた。

それをそのまま海に投げ飛ばす。


「えっ……」


あっという間の出来事で、(まばた)きする暇もなかった。


「嘘でしょ?ずっと大切に取っておいたものじゃ…」


何で――…。


「別に後生大事に取ってたわけじゃない。ただ手放すきっかけがなかっただけだ。今はここにもっと大切な物があるからな」


あたしの手を取り、真冬の砂浜に(ひざまづ)く。
< 509 / 514 >

この作品をシェア

pagetop