嘘も孤独も全部まとめて
「もう十一時過ぎだ。早く帰って寝ろ」


女の言ったことには答えず、あたしの手首を掴んで歩き出す。


「因幡さん!」


「ちょっ…」


『ちょっと』と言いたかったけれど、なぜか言えなくて黙って後ろを振り返った。

歩くあたし達をジッと見ている女と目が合う。

ふいと顔を反らされ、反対方向へ歩いていった。


「ねー」


「何だ」


「あの『とだ』って人、ほっといて良かったの?」


恋愛とかはよく分からないけれど、きっとあの女はこの男に気があるはず。
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