聖女、君子じゃございません
(まぁ、顔だけは良いからな)


 『神に愛される女性とは? 聖女とは?』と疑問を呈したくなる中身をしたアーシュラ様だが、見た目は本当に妖精のように可憐だ。もう数年もすれば、女神という称賛がピッタリの美女に成長するに違いない。

 おまけに彼女には、聖女という肩書まで備わっているのだ。殿下の結婚相手に相応しいと思えなくもない。平民の出であることは国民にとって寧ろ歓迎すべきことだろうし、教育の方はまだ若いから何とでもなる。


(あくまでアーシュラ様が普通の方なら、というおまけ付きだが)


 アーシュラ様が王太子妃――――彼女の本性を知る俺としては、不安要素しかない。本人は絶対に嫌がるだろうし、仮に婚約が成立しても殿下を盛大に振り回すことだろう。

 けれど、俺の仕事はアーシュラ様を王宮に送り届けた時点で終わった。正直言って、彼女の今後に気を揉む必要はないし、あとはお偉いさんに任せるほかない。


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