聖女、君子じゃございません

14.聖女、君子でございます

「ローラン様! 早く! 早く来てくださいっ!」


 色とりどりの花が咲き乱れる丘の上、アーシュラ様が微笑みながら俺を呼ぶ。


「全く……そんなに走ると転びますよ?」

「大丈夫ですっ! 怪我しても自分で治せますから」


 アーシュラ様はそう言って、満面の笑みを浮かべる。何だかんだ言って、祖国に帰ってこれたことが嬉しいのだろう。アーシュラ様は楽しそうだ。


 つい先程まで、草すら生えぬ荒れ果てた地であった我が国との国境。それが今や緑あふれるオアシスへと早変わりしている。
 アーシュラ様を中心にして、見る見るうちに草花が広がっていく様は、あまりにも神々しく、美しかった。雲一つない晴天に心地よい風。太陽の光がアーシュラ様目掛けて降り注ぐ。神様の祝福――――そんな風に俺には見えた。


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